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【フランチャイズの塾をご検討の方必見】学習塾の倒産・廃業が増加。学習塾の経営はどうなる?成績アップを達成できない塾は生き残りは厳しい。

  • muranao0117
  • 4月10日
  • 読了時間: 24分
倒産のイメージ

この記事で分かること

□学習塾の倒産・休廃業件数と新規参入の動向

□2040年までの学習塾のターゲット人口の推移(全国・名古屋市)

□大学生を中心としたアルバイト労働市場の現状と見通し

□超少子化社会における学習塾の顧客と労働力確保における課題

□今後の個別指導塾の経営におけるKPI

※Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略で、組織の目標達成に向けたプロセスを評価するための指標

□個別指導塾の経営におけるKPI毎の利益シミュレーション

□今後学習塾の経営を成り立たせるために顧客へ提供すべき「価値」

□その「価値」を提供するには現状の個別指導塾の仕組みでは非現実的であること


こんな人におすすめの記事です

□学習塾、特にフランチャイズの個別指導塾に加盟して独立を検討している方

□サイドビジネスとしてフランチャイズの個別指導塾への加盟を検討している方

□フランチャイズの個別指導塾を続けていくか迷っている塾経営者の方

□フランチャイズの個別指導塾へ入塾しようか迷っている保護者の方

□フランチャイズの個別指導塾経営に関して具体的な損益が気になる方

□フランチャイズの個別指導塾の経営改善に悩んでいる方


最近、2つの大きな学習塾が倒産をして、大きな話題となりました。


一つは(株)個別指導塾スタンダードです。

2024年6月28日福岡地裁に民事再生法の適用を申請しました。

負債総額は約83億2,400万円で、2000年以降の学習塾倒産では最大規模となりました。


今年に入っては、大学受験予備校の「ニチガク」を運営する(株)日本学力振興会が事業を停止し、負債約1億円を抱えて破産申請を行いました。

受験シーズンを目前にしたタイミングでの事業停止は、約130名の生徒や多くの関係者に混乱を招いています。


ここ、愛知県でも昨年、ビクセス予備校を運営する「日本教育フォーラム」が倒産をしました。

閉校の連絡は事前には一切なく、保護者らへの報告は1通のメールだけで、内容は、

「ビクセス予備校は、2024年6月28日をもって閉館いたします。6月29日以降は塾に入ることができなくなります」

といったものでした。

すでに支払っていた授業料等の返還は難しいという状況になっています。


目次








東京商工リサーチによると、2024年の学習塾の倒産件数は53件と、2018年の42件を抜いて過去最高となりました。

※倒産件数は負債1000万以上を抱えての廃業をカウントしています。


保護者の方は、自分が通っている塾・お子さんを通わせている塾・アルバイトをしている塾が突然閉鎖するということがないか、不安ですよね。


残念ながら、今後も倒産や廃業をする学習塾は増えていくと思います。

東京商工リサーチのグラフを見てみましょう。


「学習塾」の倒産、休業・解散、新設法人推移(東京商工リサーチ調べ)

「倒産」だけではなく「休廃業・解散」の推移に注目してみてください。

2018年から高い値で推移していましたが、2024年に一気に200件近くまで拡大をしました。


倒産だけでなく、休業・廃業という形で閉める学習塾も増えているんです。

人口圧が高い世代が引退していくというのはもちろんあるのですが、それ以上に「超少子化」という社会の影響が大きいと思います。

「現在」も苦しい学習塾にとっては、「この先」は事業を続けていけないという現実があります。よって、廃業を選択する学習塾はどんどん増えると思います。


【少子化が進行し生徒・バイト講師ともに母数が減少】

ここで、少子化の影響を確認しておきましょう。


<【全国】2041年までの学習塾のメインターゲット(11歳から15歳)の人口推移>

【2025年から2041年】全国における学習塾のメインターゲット(小学5年生~中学3年生)の人口推移|厚生労働省(出生数低位シナリオ)

厚生労働省が発表している人口推計のうち、低位シナリオといって少子化が進むシナリオで、学習塾のメインターゲットである小学5年生~中学3年生(11歳から15歳)の母数の推移を調べてみました。

2025年を1とすると、2030年は91%、2035年は74%、2040年は65%となります。

5年後の2030年まではなんとかなっても、10年後の2035年には単純計算で1/4の売上減となります。さらに5年後の2040年には1/3近い売上減となる計算です。


ただ、ここ数年の出生数を見ていると、厚労省の試算は低位シナリオであっても希望的観測が過ぎるように思えてしまいます。

直近10年の平均値で出生数が減った場合もシミュレーションしてみます。


【2025年から2041年】全国における学習塾のメインターゲット(小学5年生~中学3年生)の人口推移|2015-2024の10年間の減少平均を適用

2035年まではすでに確定しているので同じ値ですが、2040年は、なんと57%と、2025年比で半分近くまで売上が減少してしまう見込みであることが分かります。


ただ、これは全国データです。

本記事を見られるとしたら愛知県の方々が多いと思いますので、愛知県を代表して名古屋市の人口推計のデータを見てみます。


<【名古屋市】2040年までの学習塾におけるメインターゲット(11歳から15歳)の人口推移>

【名古屋市】2041年までの学習塾におけるメインターゲット(11歳から15歳)の人口推移|名古屋市(2023)

こちらは2023年の人口を1とした場合の割合のデータです。

名古屋市の場合、小学5年生~中学3年生(11歳~15歳)の人口が最も落ち込むのは2035年の83%になります。

ここさえ乗り切れば、高校生は減りますが、5年後の2040年には90%近くまで回復する見通しであると言えます。


ただ、この試算は2023年の0歳の人口を最低として、以降は0歳の人口が増えていくという試算の元の数字です。


一定の社会増(出生以外の転入などによる人口増)は見込めると思いますが、0歳人口が増えるとなると、基本は自然増(出産による人口増)だと思いますが、果たして本当に出生数は回復していくのでしょうか?


確定している2035年はともかく、2040年のデータは回復どころか減少という可能性が高いような気が、どうしてもしてしまいます。


皆さんは、どう思いますか?


<【名古屋市】2040年までの19歳から22歳の人口推計>

実はもう一つ、別の視点である年齢層の人口が大事になります。

大学生です。


ほとんどの塾において主要な労働力は大学生です。この人口が減ってしまうと、労働力確保の競争が強まり、採用広告や時給の上昇など、トータルでの人件費が上がります。

先ほどの名古屋市のデータから算出した表を見てみましょう。

※ここでは大学進学率の変化は加味せず、進学率を固定した前提で話をします。


名古屋市における2040年までの19歳から22歳の人口推計|名古屋市(2023年)

まず注目なのは、2023年と比べて本年である2025年の時点で大学生が1割も減っていることです。この時点で多少なりとも人件費に影響は出ているでしょう。

逆に2035年は緩やかな減少ですので、環境的にはあまり変化はありませんが、2040年には再び1割近くが減少してしまう見込みなのです。


<生徒と講師という両面での母数減少>

ここまで、顧客である生徒(全国&名古屋市)・労働力である大学生(名古屋市)の母数の減少について確認をしてきました。


全国的に見ると、一部の都市部以外ではほとんどの学習塾はやっていけないと思います。

直近10年の減少数を2040年まで引くと、メインターゲットの母数が2040年には2024年比で57%まで落ち込んでしまう。つまり、単純計算で売上43%減です。

これはさすがにゲームオーバーだと思います。

公教育の一環として、スタディサプリのような補習動画が組み込まれていくかもしれません(といっても、学習意欲が低い過半数の層は利用しないと思います。実際にコロナで休校になったとき、名古屋市ではスタディサプリを導入したのですが、当塾の生徒さんの話を聞く限り積極的に利用をしていた人はいませんでした)


名古屋市のデータで見ると、全国程ひどいことにはなりませんが、それでも厳しい環境なのは間違いないです。


母数減少の他にも、学習塾の経営に逆風が吹いているからです。


【アルバイトとしての魅力で完全に負けている「塾講師バイト」】

その逆風の一部として、労働力=バイト学生の確保の誘因力低下の例を挙げておきます。

本内容は、前記事に詳しく記載していますので、抜粋だけ記載します。


<「塾講師バイト」が不人気の理由>

  1. 過去とは違い時給が他のアルバイトとほぼ変わらない水準

  2. 面接と採用試験に対策が必要で他のアルバイトと比べて時間がかかる。研修期間が長く低時給での労働期間が長い

  3. 無給労働が多く発生する

  4. 実質時給換算すると他のアルバイトと比べて時給がかなり下がる

  5. 頭髪や服装、アクセサリーなどの縛りがある

  6. 一部の個別指導塾では、教室の業務である電話対応や保護者面談・進路指導も行わなければならない


<「オンライン家庭教師」が人気の理由>

  1. 出退勤の時間を節約できる

  2. 授業時間を柔軟に設定できる

  3. 採用試験がない

  4. 研修期間がない

  5. 事前準備が比較的少ない

  6. 授業中に他事がしやすい

  7. 保護者とのやりとりやクレームはマッチング業者が対応してくれる

  8. クレームにより契約が切られても案件が山のように転がっている

  9. 塾講師バイトに比べて高時給


<「母数減少」に加え「誘因力低下」で学習塾の経営は更に困難な状況>

【学習塾の経営危機】塾講師バイトが不足する構図

先ほど述べた母数の低下に加え、現在このような誘因力低下が起きている状況です。

イメージ的な数式を書くと下記になります。


過去のバイト講師数✖母数減少割合✖誘因力低下割合=確保可能なバイト講師数


色々ありますが、やはりまずは他アルバイトと比較しての相対的な時給の低下が主因です。

塾講師バイトの時給は1,200円~1,300円といったところです。

これは、名古屋市の求人もそうですが、時給が高い東京都でも同じような水準です。


時給を「上げてない」ではなく「上げられない」というのが実情なのだと思います。

この誘因力の低下が、さらなる採用コストの上昇を招くという悪循環に陥っています。


そして、「オンライン家庭教師」という既存の学習塾に対する競合が出現したのも大きいです。「指導」というほぼ同じ業務でありながら、効率性や時給単価で完全に優位性を持っています。


これらの現象の影響をもろに受けるのは、学習塾の中でも特に「個別指導塾」です。

バイト講師をメインとする個別指導塾に関しては特に厳しい経営を強いられていきます。


【個別指導塾における広告宣伝費と採用費の相場】

ここからは、特にフランチャイズに加盟しての個別指導塾の経営に絞って、データを元に深堀していきます。


個人的には、フランチャイズの個別指導塾というのは、マッチングビジネスであると考えています。

指導を受けたい生徒(または受けさせたい保護者)、指導を提供してアルバイト代を稼ぎたいバイト講師。

この2者をマッチングさせつつ、日程の調整だったり細々とした業務や双方の要望について調整を行うエージェントが個別指導塾の教室長となります。


ですので、市場から生徒とバイト講師を獲得してこなければ事業が成り立たない訳です。

そのためのメインの経費が広告宣伝費と採用費となります。


<生徒獲得の広告宣伝費について>

生徒獲得のための広告宣伝費ですが、2009年のデータで生徒一人を獲得するための広告宣伝費は、集団塾が25,000円、個別指導塾は100,000円というデータが出ています。

学習塾が生徒一人を獲得するのに必要な広告宣伝費(2009年)

PLが開示されている企業なので、あくまで大手のデータとはなります。

個別指導塾に関しては、東京個別指導学院、リソー教育、明光義塾という3つの大手個別指導塾のデータです。


このデータは2009年なので現在に比べると物価が安く生徒の母数も多かった時期で、今では100,000円よりも上がっていると考える方が妥当ですが、一旦生徒一人あたりの獲得に100,000円かかるという前提を置いておきます。


<バイト講師獲得の採用費について>

バイト講師確保のための「採用費」ですが、2019年に人材マッチング会社が行った東京都におけるアルバイト種別の採用コストと平均時給のデータを紹介します。

業種別アルバイトの採用単価と平均時給(東京都:2019年)

引用元:㈱ネオキャリア(2019:元記事はこちらをご覧ください


2019年当時はバイト講師一人の雇うのに73,000円かかるというデータなります。

広告宣伝費と同様に、6年前のデータであることから現在ではもっと費用はかかるでしょう。

※平均時給は1,607円になっていて、先ほど言っていた1200~1300円ではないじゃないかと突っ込みが入りそうですが、医学部生や東大生限定、大学受験生や中学受験生の指導業務といった、高い学力と経験を求める求人も含んでいるので時給が上がっていると考えられます。

多くの個別指導塾の求人の場合は、2025年現在においても1200~1300円といったところです。


【個別指導塾における採算とそのKPIについて】

広告宣伝費と採用費の相場も分かったところで、採算について考えてみましょう。

まずは、売上から上記を除いた費用を差し引いて月の手残りを考えます。

そのうえで、広告宣伝費と採用費を加味して、開業費と累積赤字を取り返すまでにかかる期間を算出してみましょう。


<広告宣伝費と採用費を除いた月の手残り>

講師1名生徒2名の個別指導で、1回の授業を90分と設定します。

生徒数は30名の設定でいきます。


諸経費の按分込みで1回の授業の売上を1人4,000円とします。ややこしいので税抜きです。

平均週2回の授業があるとすると、月の延べ人数は30×8=240人となります。

生徒2名の指導なので、授業回数は240÷2=120回となります。

月の売上は下記になります。

4,000円×2×120=960,000円


ここから15%をフランチャイズ料を支払います

960,000円×0.85=816,000円

ここから地代家賃130,000円、水道光熱費20,000円の固定費を引きます

816,000円-150,000円=766,000円

さらに教室長を1人として人件費を引きます。社保込みで350,000円とします。

766,000円-350,000円=416,000円

バイト講師の給料を算出します。バイト講師の時給1,200円を90分換算して、支給交通費を1回の授業あたり350円を加算した上で、120回の授業を実施する人件費を算出します。

(1,200×1.5+350)×120=258,000円

バイト講師の給料を現状の手残りから引きいて、ざっくりとした月の手残りを出します

416,000円-258,000円=158,000円

ただし、学習塾には季節講習があるので、春・夏・冬を合計して2ヶ月相当の売上が出ると仮定します。

バイト講師の人件費を計算して講習分の手残りを出して、それを月の手残りに按分します

(816,000円-258,000円)×2÷12=93,000円

毎月の手残りと講習分の手残りを月に按分した合計を、最終的な月の平均手残りとして算出します

158,000円+93,000円=251,000円

広告宣伝費と採用費を除外した毎月の平均手残りは251,000円となりました。


<広告宣伝費と採用費を加味して開業費と累積赤字を取り返すまでにかかる期間>

広告宣伝費と採用費を算出していきます。

広告宣伝費は生徒一人に100,000円かかりますので、下記が広告宣伝費となります

100,000円×30=3,000,000円

生徒30名と必要なバイト講師を雇う採用費を計算していきます。

バイト講師が週平均2.5回授業をすると仮定すると、1ヶ月を4週として、1人10回授業を担当できます。必要なバイト講師数と採用費を算出します

120回÷10回=12人 12人×73,000円=876,000円

実際にはギリギリで回すわけにもいかないので、もう少し採用費はかかると思います。


最後に、広告宣伝費と採用費を取り返すのにかかる期間を割り出します

広告宣伝費と採用費の合計を月の手残りで割ります。

(3,000,000円+876,000円)÷251,000円=15.44ヶ月

この計算でいくと、生徒とバイト講師が平均15.44ヶ月の継続してくれれば±0円のラインとなります


開業費などの回収も必要です。

開業2年で生徒30名にこぎつけるとして、イニシャルコストが500万、2年間のトータル赤字を750万とした場合、以下が開業してからの回収期間となります

(5,000,000円+7,500,000円)÷251,000円=49.80ヶ月

開業費と累積赤字については一度償却してしまえば消えますが、広告宣伝費と採用費については、継続的に打っていく必要があります。

要するに、試算上は継続月15.44ヶ月が収支トントンのラインですが、生徒30名と講師12名がそれ以上継続した分が開業費と累積赤字の償却に充てられることになります


広告宣伝費と採用費の上昇は、回収期間の長期化を招きます

顧客の財布頼りの値上やオプションサービスの提案などによる単価アップもありますが、当塾のように、ほとんど広告宣伝費をかけずにバイト講師も雇わないという個人塾の個別指導塾もあります。

何か目に見えて効果が出るサービスがあれば価格上昇にも納得してもらえると思いますが、ブランドや知名度に頼った単価UP策ばかりでは、ターゲットも狭くなり、他塾や代替サービスとの価格差が大きく開いて顧客離れを招いてしまうでしょう


そうすると、生徒とバイト講師の継続期間の長期化が鍵となり、継続月数がKPIいうことになると、私は思います。


<継続月に応じた初期投資回収月数と得られる利益①>

生徒とバイト講師の継続期間に注目して考えてみます。

生徒とバイト講師の継続月数毎に、開業費と累積赤字を含めた初期投資回収までの年数と年の粗利益をシミュレーションし、6ヶ月毎の18、24、30ヶ月の数値を確認してみます。


□生徒とバイト講師の継続月数毎の初期投資回収期間と年額粗利の試算結果①(初期投資12,500,000円、教室長人件費350,000円(社保込)、地代家賃130,000円/月、水道光熱費20,000円/月、生徒数30名、講師時給1,200円(交通費350円/1授業)、1授業90分講師1名生徒2名、広告宣伝100,000円/人、採用費73,000円/人)

生徒・バイト講師の継続期間(月)

開業費と累積赤字の回収にかかる期間(年)

初期投資回収後の粗利益(年額)

初期投資回収後の年利(%)

15.44

¥0

0

16

118.6

¥105,420

0.8%

17

45.2

¥276,395

2.2%

18

29.2

¥428,373

3.4%

19

22.1

¥564,354

4.5%

20

18.2

¥686,736

5.5%

21

15.7

¥797,463

6.4%

22

13.9

¥898,124

7.2%

23

12.6

¥990,031

7.9%

24

11.6

¥1,074,280

8.6%

25

10.9

¥1,151,789

9.2%

26

10.2

¥1,223,335

9.8%

27

9.7

¥1,289,582

10.3%

28

9.3

¥1,351,097

10.8%

29

8.9

¥1,408,370

11.3%

30

8.6

¥1,461,824

11.7%

31

8.3

¥1,511,830

12.1%

32

8.0

¥1,558,710

12.5%

33

7.8

¥1,602,749

12.8%

34

7.6

¥1,644,198

13.2%

35

7.4

¥1,683,278

13.5%

36

7.3

¥1,720,187

13.8%

<継続期間が18ヶ月>

自己資金回収までに約30年かかる計算です。

事業としては成り立っていませんね。自身がオーナー兼教室長として働く場合、この試算条件が変化しない前提ならは食べていけると思いますが、社保込みで年収420万なので、ざっくりの手取りは317万程で、そこから個人事業税の6.5万引かれて、310万程の手取りです。(青色申告65万・配偶者控除なし)

ただ、これから少子化がさらに進むという状況ですので、自己資金が回収できないまま廃業になる可能性はかなり高いと言えます。


<継続期間24ヶ月>

オーナー兼教室長として働く分には現実的な選択肢と上がってくるラインかと思います。

ただ、それでも都市部でターゲットの母数の減少が緩やかな地域に限ります。急激な環境悪化の兆しがあれば、撤退の判断は早目にすべきだと思います。

投資としては検討可能なラインになります。

不動産投資の自己資金の回収目安が5年~10年と言われているので、回収まではやや長くなりますが、年額1,074,280円のリターンがあります。初期投資を12,500,000円とすると、8.6%の税引前の利率となります。

しかし、金融資産や不動産投資に比べて圧倒的に手間がかかります。コストとリターンがあっているかと言われれば、全く合っていないと思います。


<継続期間30ヶ月>

オーナー兼教室長として働く分には継続期間24ヶ月とそんなに大差ないと思います。

投資案件としては、人によっては多少の魅力が出てくるかもしれません。

回収は8.6年、年額1,461,824円のリターンです。11.7%の税引き前利率となります。

ただ、個人的にはこれでもコストとリターン、そしてなによりリスクが釣り合っているとは思いません。

優秀な教室長を見つけて丸投げできて、撤退の判断が素早くできるならありかとは思います。


<継続月に応じた初期投資回収月数と得られる利益②>

少子化による事業環境の悪化を加味してシミュレーションしてみます。

広告宣伝費は2009年、採用費は2019年のデータを使っているので、試しに広告宣伝費と採用費を10%高くしてみましょう。


□生徒とバイト講師の継続月数毎の初期投資回収期間と年額粗利の試算結果②(初期投資12,500,000円、教室長人件費350,000円(社保込)、地代家賃130,000円/月、水道光熱費20,000円/月、生徒数30名、講師時給1,200円(交通費350円/1授業)、1授業90分講師1名生徒2名、広告宣伝110,000円/人、採用費80,300円/人)

生徒・バイト講師の継続期間(月)

開業費と累積赤字の回収にかかる期間(年)

初期投資回収後の粗利益(年額)

初期投資回収後の年利(%)

16.98

¥0

0

17

3,527.6

¥3,544

0.0%

18

73.2

¥170,680

1.4%

19

39.0

¥320,223

2.6%

20

27.5

¥454,812

3.6%

21

21.7

¥576,583

4.6%

22

18.2

¥687,284

5.5%

23

15.9

¥788,358

6.3%

24

14.2

¥881,010

7.0%

25

12.9

¥966,250

7.7%

26

12.0

¥1,044,932

8.4%

27

11.2

¥1,117,787

8.9%

28

10.5

¥1,185,437

9.5%

29

10.0

¥1,248,422

10.0%

30

9.6

¥1,307,208

10.5%

31

9.2

¥1,362,201

10.9%

32

8.8

¥1,413,758

11.3%

33

8.5

¥1,462,189

11.7%

34

8.3

¥1,507,772

12.1%

35

8.1

¥1,550,750

12.4%

36

7.9

¥1,591,340

12.7%

<継続期間が18ヶ月>

自己資金回収までに約73年かかる計算です。

事業としては成り立っていないどころか、自身がオーナー兼教室長としても非現実的です。30年やっても1,250万の内半分も返済できません。広告宣伝費と採用費のトントンラインに近づけば近づく程シビアになります。その意味で環境悪化の影響は甚大と言えます。



<継続期間24ヶ月>

回収は9.6年、年額881,010円のリターンです。7.04%の税引き前利率となります。

都市部の教室のオーナー兼教室長としてなら、ワンチャンかけてみるのもありかと思いますが、リスクがかなり高いです。

投資案件としては現実的ではないです。


<継続期間30ヶ月>

回収は9.6年、年額1,307,208円のリターンです。10.4%の税引き前利率となります。

やや条件は悪くなりますが、同じく優秀な教室長を見つけて丸投げできて、撤退判断が素早くできるならありかと思います。


<環境悪化のインパクト>

投資案件としては回収期間と利率の面でやや悪化するという感じです。

一方で、オーナー兼教室長としてやっていけるかどうかのラインは確実に切りあがっていきます。


【経費回収期間の長期化で「集客してできるだけ継続してもらう」では今後は通用しない】

継続月数をKPIとして、次は広告宣伝費と採用費を回収するための15.44や16.98ヶ月の難易度ということを考えていきたいと思います。


<生徒の継続月数について>

まずは生徒側の継続月数から。


当塾ではデータを取っていません。

広告宣伝費をほぼ使用しないので、自塾にとってはKPIではないからです。

ですので、肌感覚での検証してみます。


まず、ミスマッチで入塾してしまう子がいるので、この場合だいたい1~3ヶ月で辞めます。当塾は宿題の量は少なくないですし、誤魔化しがある場合は指摘をして期限を切りなおして終わらせるように指導するので、ミスマッチした子が辞める期間は短いと思います。

だいたい、5人に1人ぐらいいる感じで20%ぐらいでしょうか?


あとは、だいたい入塾したタイミングで期間が決まる感じです。

当塾は高校受験が終わる2月でいったん全員卒塾という扱いにしています。

高校での指導に関しては、生徒さんや保護者の方から指導依頼を頂いた場合のみ継続をするスタイルです。


小学校高学年からの子は4,5年、新中学1年生からの子は3年、あとはまちまちですが平均すると1.5年ぐらいになると思います。

割合的にはそれぞれ10%,30%,40%ぐらい、だと思います。


肌感覚にはなりますが、当塾の数値を一旦計算してみます。

個人塾(個別指導塾)の生徒継続月数の概算値

大体、24ヶ月という数字になりました。

・・・うーん、結構厳しい数字ですねぇ。当塾の場合、ぎちぎちに生徒さんを受けいれても25人程度ですし、平均すると週1.5回程度の通塾コースです。

1授業の料金ももっと安いですからねぇ。(これまでの試算は30人、週2回、1授業税別4,000円)


「え?もしかして、モリコベは経営がやばい?」とご通塾の方は思われる方がいるかもしれませんが、安心して下さい。

先ほど書いたように、当塾の場合広告宣伝費もほぼかけてないですし、塾長一人体制なので当然採用費もバイト代もかかっていません。

ぶっちゃけ、生徒10人でも空いた時間で少し私が別のことで稼げばどうなっても継続していけます。


ただ、一般的な個別指導塾はそうはいきません。

そして、平均継続月数24ヶ月。この数字がフランチャイズの個別指導塾の経営で出せるかというと、私個人はかなり厳しいと見ています。


一般的な個別指導塾の良い点としては、当塾のようにミスマッチで退塾というのはほぼないということです。

基本的に生徒さんが辞めないように「生徒さんが機嫌を損ねるようなことは言わない」というマニュアル化されて徹底されていますから。

キャバクラ塾=塾キャバと言われる所以ですね。よって、下限は切りあがるでしょう。


一方で、すぐに生徒さんが辞めるということはない反面、高校受験まで続けてくれるかというと、大きなハードルがあります。

それはやはり、成績アップを実績として出せるかどうかです。


当塾では開校以来、ミスマッチで辞めた生徒を除いた中学1年生の2学期以降に入塾した生徒に対して、一人平均評定4.28UP(当然、5科目です)を実績として出しています。


時給1,200円のバイト講師が「生徒さんが機嫌を損ねるようなことは言わない」というマニュアルがある中で、どこまで成績を上げられますか?

教室長の方でも、難しいのではないでしょうか?


一部の地力のある生徒さんは成績が上がると思いますが、個別指導塾に来る生徒さんは、成績が低迷している子が多く、量も質も足りてない状態です。

そんな子たちの成績を一般的な個別指導塾が上げられるとは客観的に見て考えにくい訳です。


となると、どこかで必ず「成績が上がってない・・・。塾を変えなきゃ!」という保護者の方の判断が入ります。


もう10年近く前の話ですが、実際ある大手個別指導塾の塾向けセミナーで聞いた話があります。

その大手個別指導塾が、自塾に通う生徒さんの成績変化を調べたところ、「成績維持」という結果だったそうです。

そして、それを「他塾ではできない立派な結果」という言い方でお伝えでした。


2回ぐらいは定期テストの結果を見ると思います。そこからは保護者の方の忍耐力や生徒さんの「(楽だから)今の塾がいい」という説得によるロスタイムとなると思います。

そうなると、通ってくれるのは長くて1年ぐらいかなぁ、と思います。


もちろん、一般的な個別指導塾で成績が上がっていく生徒さんもいます。

一般的な個別指導塾で成績が上がる割合は2,3割と言われています。


ここで、これまでに出てきた一般的なフランチャイズ系個別指導塾の継続月数をざっくり試算してみましょう。以下の条件で計算します。

25%の生徒さんが成績があがり入塾から高校入試まで塾を継続する仮定し、この期間を24ヶ月とします。

残りの成績UPが見られない75%の生徒さんは6~12ヶ月の平均である7.5ヶ月を継続期間とします。

一般的なフランチャイズ系個別指導塾の生徒の継続月数の概算

ピッタリ15ヶ月となりました。

広告宣伝費(2009年データ)と採用費(2019年データ)がちょうどペイする継続月数が15.44ヶ月でしたので、ギリギリ赤字です。


ただ、実際には季節講習時などの営業をがんばって、生徒にたくさんコマ数をとってもらうことでやや利益が出るぐらいまでにはもっていっているというのが実態だと思います。

ですので、ここの営業力強化を口を酸っぱくして言うオーナーさんも多いのではと思います。


<バイト講師の継続月数について>

ぶっちゃけ、講師の継続月数を伸ばすのに必要なことは簡単です。

負荷をなるべく下げるか、時給を高く設定するかです。


ですが、それができないから今の状況な訳ですね。


・負荷を下げるために人を増やす

・採用力を強化するために時給を上げる


どのみち、収益を圧迫しますが、ここに振り向ける収益的余裕がある個別指導塾がどれほどあるかは疑問です。


今や大学生アルバイトは金の卵で、どこも喉から手がでるほど欲しい人材です。

さらに、オンライン家庭教師という競合もいます

多くの候別指導塾で行われている中高生への補習授業。

大手オンライン家庭教師派遣の「メガスタ」においては、最低時給が1,840円です

職場への移動もありません。シフトの融通も利きます。


打つ手がなかなか見つからないという状況ですが、個人的にはシニアの活用が考えられるかと思います。


人口が多いシニア世代の中で、オンラインは操作が良く分からないや、対面じゃないとなんか気持ち悪いという方を中心に雇い、子供たちと接することを付加価値に働いてもらうという策は考えられます。


ただ、教室長のマネジメント面や生徒達の反応は未知数なので、やってみないとわからないというところです。


ですが、それぐらい打つ手がないという状況でもあります。


【結論:学習塾経営、特に個別指導塾の経営はやめとけ】

いかがでしたでしょうか?

生徒が長く通ってくれれば、広告宣伝費を抑えられて、採用費やバイト講師の待遇改善にキャッシュをまわすこともできるでしょう。


ただ、生徒が長く通ってくれるには、成績アップが至上命題になると思います。

「できるだけ生徒がやめないように」というマニュアルは生徒の短期での退塾を防ぐ効果はありますが、長期で通ってくれるという目線で見れば、逆に大半の生徒の成績停滞を招くことになります。

この辺は痛し痒しですが、オーナー兼教室長としてやる場合でも、継続月数平均24ヶ月ぐらいは確保しておきたいところだと思います。


ただ、アルバイトさんに指導を任せている訳ですから、成績アップに深くコミットしてもらうというわけにいかないということも分かります。

2015年頃の「ブラックバイト問題」のように、再び社会問題になってしまっては元も子もない訳ですから。


さらに環境が悪化していきます。

もっと言えば、試算の前提となっている生徒数30人も簡単に達成できるものではありません。


ここで、あるデータを紹介します。

・東京商工リサーチ「学習塾の約3割が赤字」(2025/1/14:元記事を見る


さあ、それでもフランチャイズに加盟して、個別指導塾を運営しますか?

特にサイドビジネスとしてフランチャイズに加盟して個別指導塾の運営をしようとお考えのみなさん。

簡単ではないですし、環境は悪化する一方です。

もっと楽で儲かる投資先があるはずです。


 
 
 

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