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【中学生でも自分を客観的に把握できる子は少ない】
「分からない」が「分かる」からやる気がでる、的な塾のキャッチフレーズ多いですよね。
全くの嘘っぱちとは思わないですが、それより大事なのは「分かってる」を「分かってない」に変えることだと思っています。
それは、中学生でも「分かってる」と「分かってない」を判断できる子が少ないからです。
中学生理科の例
実際に最近あったやりとりを具体例として紹介します。
講師「力のつり合う条件は整理できましたか?」
生徒「分かった!」
講師「では基本の確認をしましょう。力がつり合う条件は?」
生徒「同じ!」
講師「何が同じでしょうか?」
生徒「力が!」
講師「力の何が同じでしょうか?」
生徒「・・・重力?」
講師「・・・では、目線を変えましょう。同じという言葉は一つのものに対しては成立しない言葉です。二つ以上のものがあって、AとB、AとBとCが同じ、という使い方をするのが「同じ」という言葉の意味です。その上で、何と何が”同じ”になりますか?」
生徒「・・・重力・・・と、力・・・?」
だいたい、この生徒さんがどのように”理解”をしていたのか、お分かりになると思います。
『力がつり合う条件=同じ』、です。
本来、力がつり合う条件は「二つの力が一直線上で、逆向きで、大きさが同じ」となります。
細かい理解を自分で行わずに、「同じ」という言葉に”白紙委任”してしまっているのです。
ただ、生徒さんに「楽をしよう」などの悪気がある訳ではないです。
見ていると、脳の作用として色々とごちゃついたものを削ぎ落として、シンプルなものにして認識しようとしていると、感じます。
中学生英語の例
ちょっとした理解が必要となる知識だけでなく、単なる暗記事項に対しても、「分かってる」の誤認は起きます。
こちらも、最近あった中学生の英単語の例を紹介します。
講師「この教科書本文プリントの中で分からない単語を全てマーカーで引いていって下さい」
生徒「はい。・・・できました。」
講師「・・・(さっと全体を見て「誤認発生のリスク」を測定しています)。peopleに線がないですが、意味は分かりますか?」
生徒「・・・分かりません。」
講師「(peopleに線を引く)では、reallyの意味は分かりますか?」
生徒「はい!」
講師「では、意味を教えて下さい」
生徒「・・・えっ、と・・・」
講師「(reallyに線を引く)0.5秒で答えが出てこないものはテストで使えません。理解してない、覚えてないという分類に入れて下さい。」
こういったやりとりを続けて、結局、生徒さんが「分かってる」と判断した単語の内、講師が「分かってない」と判断した単語は何十にもなりました。
【小学生や中学生の指導において、「分からない」を「分かる」に変えるより、「分かってる」を「分かってない」に変える方が順番が先】
当然ですが、「分かってる」「分かってない」の現状認識がずれれば、ターゲットとなる知識に正しくアプローチできません。
「分かってない」のに放置されてしまい、テストや入試で『できない』という現象として出現します。
「分からない」を「分かる」に変えることも当然必要なのですが、その前に現状認識を正しくできるようにならないといけないという事です。
これができていない内の勉強というのは、〈穴だらけの投網を投げているようなもの〉です。
きちんと自分が「分からない」知識を精度高く洗い出した上で、「分かる」に変えていく必要があるということです。
【一方で小学生や中学生にとっては”ショック”で”嫌なこと”】
想像してみると分かりますが、講師により「分かってる」が「分かってない」に次々と変えられていくのは、生徒さんにとって少なからずショックだし嫌な気持ちになると思います。〈オセロで相手方に次々ひっくり返されていく感じ〉かもしれません。「うわっ、こっから巻き返すの、大変だぞ・・・」と思うでしょう。
だからといって、ここにメスを入れなければ、試合(テストや入試)に負けます。
現状認識の精度を高めていかなければ、結果も変わっていかない訳で、「成績を上げる」ことを塾の仕事と定義している学習塾の場合、ここは避けて通れないです。
講師「何か質問ありますか?」
生徒「ないです。」
講師「では、次にいきましょう。」
楽です。講師も生徒さんも。優しい空間ですね。
講師「何か質問ありますか?」
生徒「ないです。」
講師「本当ですか?では、これを説明してください」
生徒「えっ・・・と、あれ?」
講師「では、今度はこちらを」
生徒「〇〇です!」
講師「うーん、違いますね。では、こっちは?」
生徒「・・・・・・分からないです」
お互い、大変ですね。〈わざわざ寝た子を起こさなくても・・・〉と思う講師さんもいるでしょう。
しかし、繰り返しになりますが、私は成績アップのための重要なプロセスと考えています。
【現状認識の精度を上げるには”希望的観測バイアス”を制御していく必要がある】
私の感覚になりますが、通知表3以下の子は、この現状認識の精度が一定レベルに達してないことが多いと感じます。
正しい認識の阻害に、"希望的観測バイアス"が強く働いていると現場で感じます。
"希望的観測バイアス"とは
根拠の無い自分の主張を、正しい推論だと都合の良い方向に考える心理的傾向です。
心理的傾向のため、無意識化で作用をしています。
よって、生徒さんに悪気がある訳ではなく、生物の仕組みと考えています。
対処方法は
以下が一般的な対処方法です。
自分のバイアスについて認知する
批判的に物事を見る
人の意見に耳を傾ける
固定観念の原因を考える
過去の成功例を当てにしすぎない
データや数字を根拠にする
この6つの中で、私は1と6の対処方法を指導の中に組み込んで、生徒さんにトレーニングしてもらっています。
自分のバイアスについて認知する
具体例で挙げた類の事を日々繰り返し行います。希望的観測バイアスを認知できていない状態なので、こちらで指摘をして判断と結果が異なっていたという状況をたくさん作っていきます。
こういうやりとりを続けていくと、生徒さん自身にも(理解したつもりだけど、分かっていない部分があるんじゃないか・・・)という気持ちが芽生えてきます。
結果、こちらの「理解できましたか?」という確認に対して、「分かった・・・つもり」というような発言に変化してきます。
データや数字を根拠とする
全ての知識についてこちらで確認をとることは現実的ではありません。最終的には生徒さんが自分で精度高く判断できる必要があります。
ですので、バイアスの認知ができてきた状態で、理解度を精度高く測定するための「実践」を伝えます。
「実践」とはなにか。簡単です。『自問自答』です。
「分かってる」「分かってない」の判断ではなく、『問題形式で自分に知識を問うて、すっと答えられるか否か』で判断するということです。
今回の具体例でいくと、理科の例のような”理解が必要な知識”であれば、『自分が先生として他人に教えらえるか』、英単語の訳の例のような”断片的な知識”であれば、『訳を直ぐに引き出せたか』という形で「実践」をしてもらうことになります。
【成績を上げるには、”勉強”から一歩深ぼって対策をしていく必要がある】
このように、勉強も細かく見て行けば、認知の一種であると言えます。
「勉強のやり方」と良く言いますが、型をマネするだけだと効果は薄いと感じています。
そのやり方が何をコントロールしようとしているのかと、どうしてもその部分をコントロールする必要があるのかを理解しておくことが大事だと思います。
今回で言えば、下記になります。
勉強のやり方
「分かっている」「分かってない」の判断は、自問自答の結果により判断を下す。
コントロール対象
希望的観測バイアス
なぜ希望的観測バイアスをコントロールするのか
生物の仕組みとして無意識化で自分の都合の良いように判断する傾向が存在し、自身の理解に関して誤認が起きると、対象の知識の獲得ができないリスクが高まり、テストや入試で結果につながりにくいから。
【守山個別塾ーモリコベ!ーと関連情報について】
名古屋市守山区にある<プロ講師が教える個別指導塾>「守山個別塾ーモリコベ!ー」のブログです。
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